★株式会社Gakkenが協賛する小川未明文学賞のホームページです★
★主催 上越市/小川未明文学賞委員会★
《第34回》
締切:2025年10月31日(金)当日消印有効
小川未明文学賞は、未来に生きる子どもたちにふさわしい児童文学作品の誕生を願って、1991年(平成3年)に創設された公募による文学賞です。
創設以来、本賞は理想と現実の問題に真摯に取り組む児童文学作家を世に送り出してきました。未明の精神である「誠実な人間愛と強靭な正義感」を、子どもたちに育むような創作児童文学作品を募集しています。
≪選考経過≫
※クリックすると、上越市 小川未明文学館公式サイトにジャンプします
(1882-1961)
小川未明は、新潟県上越市高田出身の小説家・童話作家です。
明治15年(1882年)、現在の幸町で旧高田藩士の家に生まれ、中頸城尋常中学校(現 高田高校)へ入学。早稲田大学学生時代に、坪内逍遥や島村抱月、ラフカディオ・ハーンらの指導を受け、小説家としての地位を築きました。
その後、小説を書くかたわら、数多くの童話を創作しました。昭和36年(1961年)、79歳で死去するまで約1,200編の童話を送り出し、「日本のアンデルセン」として、現在もたくさんの読者に親しまれています。代表作には「赤い蝋燭と人魚」、「野ばら」などがあります。
児童文学作家・小川未明文学賞、小学館児童出版文化賞ほか受賞。
主な著作に『こんぴら狗』など
ユニークな作品を
いじめ、離婚、老人問題――毎回かならず応募される題材です。できれば誰も書かない世界を、あなた独自の言葉で紡いで下さい。繰り返し推敲してください。
それがドラマチックな作品、面白い作品ならなお嬉しいです。
詩人・評論家・小川未明ご子孫
主な著作に『創生記 小川英晴詩集』など
時代を超越した究極の作品を
今までの未明文学賞を振り返って、すぐれた長編は数多く生まれましたが、いまだすぐれた短編には出会っていません。現代において、詩的で魅力的な童話を書くことは、ある意味時代錯誤と言われるかもしれません。ですが、ぜひとも時代を超越した究極の作品を、勇気ある投稿者の手によって、書いていただければと思います。
上越教育大学教授・小川未明文学館専門指導員
主な著作に『小川未明に親しむ』など
新しい時代の子供たちへ
今から百年前、スペイン風邪にかかった未明は、快復後に「野薔薇」を発表します。それ以前、愛児を失った未明は「金の輪」を書きました。未明は、救えなかった命、救われた命の存在を胸に刻み、子供に寄り添い、新たな生を築き、新しい社会を再建しようとした作家です。子供たちへ、新たな時代を生き抜く力となるような作品を届けて下さい。
児童文学作家・産経児童出版文化賞、野間児童文芸賞ほか受賞
主な著作に『霧のむこうのふしぎな町』など
「ああ、おもしろかった!」
読み終わった時、ああ、おもしろかった!といっていただける物語を、書き手も、ああ、おもしろかったと書き終えてほしいです。
童話作家・童謡詩人、赤い鳥文学賞ほか受賞
おもな著作に『ほしとそらのしたで』など
詩的で、美しい作品を
今の児童文学の世界で、詩的な、美しい短編に出会う機会が少ないので、私自身が大いに刺激される、短編に出会えるのをとても楽しみにしています。
株式会社Gakken
児童読み物チーム編集長
今のこどもたちにとって宝物になるような物語
今を生きるこどもたちが、
夢中になって読めて、
未来に向かって心の糧になる物語。
そんな、宝物になるような作品と出会えることを
楽しみにしております。
小川未明文学賞の歴代受賞者へのインタビューやニュースを掲載。受賞当時の思い出や、応募者へのメッセージなどを掲載していきます。
第33回小川未明文学賞の選評を
公開しました。2025年10月3日更新
「第33回小川未明文学賞選評」今井 恭子
2022年今回の最終候補作は優劣つけがたく、たいへん迷いました。大賞となった「ほーちゃんと、旅に出る」は、障害者たちと支援する人々を明るく描いた心温まる作品でしたが、登場人物全員があまりに善人過ぎて、こんな風に物事は楽観的に進まないのではという疑問を抱きます。登場人物が多く煩雑になったのと、長文が多いのも気になりました。
「まねき猫よろず相談所」は、今回一番面白く読みました。存在しなくていいまねき猫はいない、というテーマはそのまま人間社会に当てはまります。ストーリーも良くできており、言葉遊びもたくみで軽妙な文体。しかし、ちょっと作り過ぎた印象が強いです。
「時をこえる時計屋 刻刻堂」はタイムリープできる時計にまつわる物語でしたが、2人の少年が不思議な時計で救われるエピソードまではすんなり読めたものの、その謎解きとなる最後のエピソードは、余りに壮大に作り過ぎた感がありました。
私は「ヒキガエルの夜」のシンプルなストーリー、映像が鮮やかに浮かび上がる文体に最もひかれましたが、オーソドックス過ぎて新鮮味には欠けたかもしれません。兄にはヒキガエルという守り神がいましたが、弟にはいないのか、また弟のその後が気になります。
「ヨーソロ 」は東日本大震災で自宅に住めなくなり、祖母の実家だった山の中の古民家に移り住む少年にまつわる物語です。漁師だった祖父のように、何度でもやりなおそうと気づくまでを描いていますが、情報量が多過ぎ、混乱が見られました。
「「時をこえる時計屋 刻刻堂」をつよく推す」小川 英晴
今回の選考では、長編にすぐれた作品が多く、私は鍵頭なるAIが登場する「時をこえる時計屋 刻刻堂」をつよく推した。この作品は、時を止める、過去に行く。未来の自分へのメッセージの三つの章から成り立っていて、特に時計屋の店員である鍵頭の存在が不思議なリアリティを持って迫ってくる。力のある作家だと思う。また「刻刻堂」という店名もよい。
次に私は「ほーちゃんと、旅に出る」に注目した。登場人物は多いが、ひとりひとりが個性豊かに、かつ生き生きと描かれていることに好感を持った。生きていくことで人は様々な問題に直面するが、それをつねに前向きに解決していく姿勢はよい。ただし、ここに登場する人が、すべて善意の人たちで成り立っていることが気になった。現実には差別意識を持った人もいるはずだし、それらをも含めて、現状を解決してゆくことが重要ではないかと思った。
「ヒキガエルの夜」は、登場人物は兄と弟、父と母とおじさん、それに二胡の先生たちだが、登場人物をしぼったことで、大変読みやすく、情景が目の前に浮かぶように描くその手腕に魅了された。しかし、一方で、誰もが考える解決方法によって書かれた作品であることも同時に感じた。
「まねき猫よろず相談所」は今回の全作品中、最も作者の実力を感じさせる作品であった。読み物としては申し分ない。ただし、五つの章から成り立っているのだが、長い。もっとコンパクトにまとめてくれれば、さらに評価はあがっただろう。まねき猫をテーマにしてよくここまで書き込んだとも思うが、もう少し、立ち止まったり、振り返ったり、読者に考えさせる場面があってもよかったのではないか。
最後に短編についてだが、児童小説を短くしたのが短編ではない。かつての童話のように、複雑な時代状況のなかから、ひとつの真理を知り、純一な思いを積み上げ、それを象徴化して表現するのが、私の望む短編である。ぜひ、黄金期の童話を参考にして頂ければと思う。
「ともに踊る」小埜 裕二
今回、短編部門3編、長編部門6編が最終選考の対象となった。短編では「ありがとー」が子どもの恥じらいと思いやりを鮮やかに切り取っていて好ましかった。「袖引小僧」は優しさにあふれ、「カモシカのゆうびんやさん」は展開が巧みであったが、語り過ぎたり急ぎ過ぎたりした。長編は選考委員の間で評価が分かれた。それは今回の長編応募作が、テーマが異なっても、優劣つけがたい、ともに踊る姿を見せていたからであろう。私は「ヨーソロ 」を一押しした。感動が大きく、子どもたちに読んでもらいたい作品であった。震災を語ることの難しさを作者は承知していた。次に「夏服に着替えたら」を押した。小学校中学年の女の子の成長過程にともなう気持ちの変化が身体感覚とともに描かれていた。「ヒキガエルの夜」はイメージ喚起力のある作品だが、不条理を不条理と捉える目が欲しかった。「まねき猫よろず相談所」「ほーちゃんと、旅に出る」「時をこえる時計屋 刻刻堂」が選考委員の間で総合的に評価が高かった。「まねき猫よろず相談所」は手慣れた筆運びで物語を読む楽しさがあった。未明童話の設定やテーマが意識された作品だが、最後の章の収め方が気になった。「時をこえる時計屋 刻刻堂」は作者の筆力に舌をまいた。この童話は今の子どもたちには理解されても、大人には無理かもしれない。私は小学4年生の平凡な巻始(まき はじめ)の生き方を語る作者の姿勢に好感をもった。「ほーちゃんと、旅に出る」は、障害をもつ人とその人をとりまく人々の物語である。スピード感があり、エピソードは多いが、それぞれの話は、子どもを事故で亡くした2人の父親の哀しみを基底に沈めることで、相手のことを思いやる優しさや、ある種の縁のようなつながりを理解させる作品となっている。「ほーちゃんと、旅にでる」が大賞となり、「まねき猫よろず相談所」が優秀賞となった。異存はない。「ヨーソロ 」「時をこえる時計屋 刻刻堂」の作者の次回作を期待したい。
「第33回小川未明文学賞選評」柏葉 幸子
今回は「まねき猫よろず相談所」「ほーちゃんと、旅に出る」「時をこえる時計屋 刻刻堂」の3作が同点という評価を得た。3作とも書きなれた文章で読みやすく、楽しめる作品だった。また、それぞれにいいところもあれば、欠点もあったと思う。その中で、大賞は「ほーちゃんと、旅に出る」、優秀賞は「まねき猫よろず相談所」と決まった。
「ほーちゃんと、旅に出る」は、一番読後感がよかった。旅に出るんだというわくわく感が伝わってきた。登場人物が個性的で魅力的だった。その分、辛い所には目をつぶっていい人ばっかり出てきたのかと思える。障害のある兄を持つ妹の思いはあまりに大人だ。同じことは「夏服に着がえたら」や「ヨーソロ 」にも言える。奇声を発して走る兄のことをバカにしたり、傷跡に意地悪なことを言う子も、まだ被災者をいじめる子もいると思う。そこは書かれていないことが気になった。「ヨーソロ 」は被災地のその後というテーマはよかったと思う。
「まねき猫よろず相談所」は、個性的な猫が出てきて楽しく読めた。5個のパートに分かれていたが、それぞれあきさせなかった。ここまで書けるのだから一つの大きな山がある筋立てにして欲しかったと思う。
「時をこえる時計屋 刻刻堂」は、さあ、どうなる という読者の疑問をさそう筋立てだが、その疑問を解決する時を操作する理屈が簡単には伝わってこない。少しお説教くさくなった。
あまりが評価なくて残念だったのが「ありがとー」だ。この枚数で孫の祖父に対する思いがリアルに伝わってきたと思う。やさしい物語だった。
「選評」矢崎 節夫
初めて選考に関わらせてもらい、9編の作品を読ませていただいたが、さすがに600編を越える中から選ばれて残った作品だと感心させられた。短編が3編あって、その中では「ありがとー」のおじいちゃんと主人公のゆうくんの繋がりのあたたかさに心引かれた。
残りの6編が100枚前後の長編で、それぞれにすぐれていていいと思った。「夏服に着がえたら」は小学1年の時、やけどをした智子が4年生になってもらった「プール授業のお知らせ」で、今年も中耳炎と嘘を母親に書いてもらって休もうとする。その時、学級委員の男の子にある本を勧められ、その本を読んで大きな心の変化が訪れることになる話だ。いつかこの作品がより深く育って、今、同じように思いがけず傷をおってしまつた子が、この作品に出合ってくれたらいいなと思った。
「時をこえる時計屋 刻刻堂」は書きなれていて、物語の進め方も上手で読ませられたが、後半の種明かしが先にわかってしまったようで、もったいなかった。
「ほーちゃんと、旅に出る」は「普通ってどんなこと」「できるひとができることをしたらええんや」と、セリフのひとつひとつが読み手に考えさせる力があった。ほーちゃんの妹の伊吹の前向きな姿に読み手として心を楽にしてもらった。旅に出るだから、出る前まででいいのだけれど、旅に出ているほーちゃんとみんなの姿が見たい気がした。
「まねき猫よろず相談所」は今回の中では、私としては一番、読み物としておもしろく読めた。作者の今後に期待したい。
「ヒキガエルの夜」は、二胡の音が聴こえてきて、中国の風景が広がってきて上手かった。
今回は長編2編が受賞されたが、短編でも長編を超える作品がでてくるといいなと、選考をさせてもらって深く思った。9編の作者に、すぐれた作品を読ませていただいて楽しい時間に感謝
「選評」株式会社Gakken 児童読み物チーム 松山 明代
最終選考作品は、長編6点、短編3点、テーマは各々だが、いずれも文章レベルの高さを感じた。大賞「ほーちゃんと、旅に出る」は、兄に対しての感情や気づきが、主人公の素直な視点でよく描かれている。同級生と友情を深めていく流れも自然。旅前の話が面白いため、出発後の物語も読みたいと感じた。優秀賞「まねき猫よろず相談所」は、猫、まねき猫同士の交流が大変楽しく読み進められる。一方で登場するキャラクター含めて諸々の設定が掘り下げられていると、深みが増したように思う。「ヨーソロ 」は、震災を経た家族の絆が丁寧に描かれている。「前向きに」というメッセージが、具体的なエピソードをもって主人公の自然な感情変化で表現されていると尚よかった。「時をこえる時計屋 刻刻堂」は非常に工夫を凝らされたタイムリープの話。命の描写に関しては慎重であってほしいのと、3話目が説明的である点が惜しい。「カモシカのゆうびんやさん」は文章表現が巧みであるが、この話の主軸の一つであるクラスメイトとの問題が解決されてほしかった。「ありがとー」は、人となりや感情の動きが自然な過程をもって描かれているとよかった。文章が整っていて読みやすい。「袖引小僧」は、友だち、自分の感情について少しずつ知っていく過程が優しく描かれている。終わり方により、本筋が見えにくくなってしまった印象を受ける。「夏服に着がえたら」は、人と違う見た目を隠さなくてもいいという話だが、様々なケース、立場も含ませられるとよかったか。まわりの登場人物の人柄がよく、ほっとする。「ヒキガエルの夜」は、中国の風景が目に浮かぶようで美しい作品だった。やや既視感のある展開なので、そこにオリジナル性があると作品として個性が増したと思う。
今後も今、そしてこれからを生きる子どもたちに向けた新しい作品を期待したい。
第30回小川未明文学賞の贈呈式を、
リモートで開催しました。2022年4月21日更新
2022年3月30日(水)、新潟県の上越市役所と東京都品川区の学研ビル内会場とをリモートで繋ぐ形で、第30回小川未明文学賞贈呈式を開催いたしました。
今回は、日本全国及び海外から集まった553作品の中から、島村木綿子さん(長崎県)の「カステラアパートのざらめさん」(長編部門)が大賞を、中村真里子さん(茨城県)の「光をつなぐ」(長編部門)が優秀賞を受賞しました。
式は午後2時より、小川未明文学賞委員会の菊永副会長のあいさつに始まり、上越市の中川市長と宮川会長、学研プラスの南條社長からのお祝いの言葉を経て、大賞の島村さん、優秀賞の中村さんへの賞状・花束の贈呈が行われました。
▲花束贈呈後、学研ビルでの様子。写真左より、宮川会長、島村木綿子さん、中村真里子さん、学研プラス・南條社長。
▲上越市役所のスクリーンに学研ビル会場を映す形での記念撮影。スクリーンの左は、上越市・中川市長。
▲大賞を受賞した島村さんに賞状と花束が贈呈された。
大賞に選ばれた「カステラアパートのざらめさん」は、カステラのような外観のアパートが舞台。小学3年生のこのみの視点で、風変わりな大家の「ざらめさん」のまわりで起こる、不思議な出来事を描いたファンタジーです。
最終選考委員を務める小川英晴氏は、大賞作品について、「物語全体に優しい空気があり、ふわふわとしたあたたかい気持ちになった。カメの千太郎をはじめ、様々な登場人物の心の動きが巧みに描けている。」と評しました。
大賞受賞者の島村さんは、「カステラアパートのざらめさん」について「こんなアパートがあってこんな住人に出会えたらなんていいだろう、と思って書いた。自分を大切に思ってくれる誰かが身近にいることを、読者の子どもたちに感じ取ってもらえたら嬉しい。」と語りました。また、「今回の受賞は、大きな励みと自信になった。不安な時代だからこそ、人の優しさやあたたかさを子どもたちが感じられるような作品を、これからも書いていきたい。」と今後の抱負も語りました。
優秀賞受賞者の中村さんは、東日本大震災から数年後、東海地方の中学での学校生活を描いた優秀賞作品「光をつなぐ」について、「震災はまだ日常の中にある。震災をテーマにして、というより、震災含め過去の出来事の上にある『今』を生きている子どもたちに伝わる物語を書きたかった。今回は絵の話だったけれど、これからも、自分の好きなものをエネルギーとして書いていきたい。」と語りました。
大賞作品は秋ごろ、学研プラスより書籍として刊行されます。
第29回小川未明文学賞の贈呈式が
開かれました。2021年5月17日更新
3月27日(土)、新潟県上越市小川未明文学館市民ギャラリーにて、第29回小川未明文学賞の贈呈式が行われました。 新型コロナウイルス感染防止の観点から、今年は関係者のみで開催され、式の後は未明ゆかりの地を巡りました。
今回は前回を100編以上も上まわる546作品のなかから、かみやとしこさん(愛知県)の「屋根に上る」が大賞、ハンノタヒロノブさん(神奈川県)の「さよならトルモリ王国」が優秀賞を受賞しました。 どちらも長編部門での受賞となります。
▲記念撮影の様子。
左から宮川健郎会長、ハンノタヒロノブさん、かみやとしこさん、上越市の村山秀幸市長。
かみやさんは、過去に2回、小川未明文学賞の優秀賞を受賞しており、今回念願の大賞となります。「自分に抜きんでた文才があると思ったことはなく、ただ書き続けてきたことにご褒美がいただけた。今後の励みになる」と喜びを語りました。最終選考委員の柏葉幸子さんは「大賞作品は、主人公の確かな未来が約束されていると確信される作品。優秀賞作品は、この枚数であれば、友人がもういないことを最後まで隠しておいた方が、インパクトがあったと思う」と、受賞作について語りました。
▲小川未明ゆかりの春日山神社の一角にある石碑。
「雲の如く 高く くものごとく かがやき 雲のごとく とらわれず」と未明の詩が刻まれている。
「屋根に上る」は中学1年生の工藤皓(こう)と、大工の村田さん、そして大工になりたくて村田さんの元へ通っている小学校の時の同級生、一樹(いつき)との交流を描いた物語です。今年2月にZoomにて行われた最終選考会において、最終選考委員で児童文学作家の今井恭子さんは、「登場人物のキャラがはっきりしている。主人公は屋根に上るのが好きで、そのためのはしごを直してもらうことで、村田さんとの関係が始まる。無理やり結末を作るのではない終わり方もすごく素直で、自然でいいと思った。タイトルも良い」と評しました。
大賞作品は今秋書籍化され、学研プラスより刊行の予定です。
第28回小川未明文学賞の授賞式を、
リモートで開催しました2020年10月19日更新
2020年10月6日(火)、新潟県の上越市役所と東京都品川区の学研ビル内会場とを繋ぐ形で、第28回小川未明文学賞のリモート授賞式を開催しました。
今回は、日本全国より集まった409作品の中から、北川佳奈さん(東京都)の「シャ・キ・ペシュ理容店のジョアン」(長編部門)が大賞、かみやとしこさん(愛知県)の「トリロン」(長編部門)が、優秀賞を受賞しました。
▲大賞を受賞した北川さんには賞状と花束が贈呈されました。
贈呈式は例年3月に開催していましたが、今年は新型コロナウイルスの影響により延期。10月に、ビデオ会議システムを利用した、初のリモートでの授賞式として、実現しました。
▲上越市役所のスクリーンに東京会場を映す形での記念撮影。
写真左より、上越市・村上越市、小川未明文学賞委員会・宮川会長、北川佳奈さん、菊永副会長、学研プラス・影山社長。
大賞に選ばれた「シャ・キ・ペシュ理容店のジョアン」は、フランスのパリが舞台。画家との出会いをきっかけに、絵に興味を抱いていく理髪店見習いの主人公ジョアンの、夢との向き合い方を描いています。
最終選考委員も務める宮川会長は、「かならずしも時代がはっきりしないパリを舞台にした作品だが、少年が人生をどう選ぶことができるかという主題がかえって純粋に書かれて、現代の日本の少年少女に手渡される」と作品を評しました。
村山市長は、祖父が理容店を営んでいた話を披露。大賞作品については、親近感をもってすぐに読んでしまったと話し、北川さんを祝しました。
北川さんは子供の頃、夏休みの宿題で書いた絵日記で、何気ない日常を文章にしたことが、文を書く楽しさを知る原体験だったと語り、「この受賞を励みにして、これからも小さなことにも目を向けながら、文章を書き続けていけたら嬉しいなと思います。」と受賞の喜びを語りました。
大賞作品は来年1月下旬、学研プラスより刊行されます。
関連リンク
海外で読まれる未明賞受賞作2020年8月26日更新
▲第19回大賞『レンタルロボット』韓国版
▲第25回大賞『あした飛ぶ』韓国版
小川未明文学賞の大賞受賞作品は、毎年のように課題図書や推薦図書に選ばれています。 でも、日本以外の国の子どもたちにも読まれていることは、意外と知られていません。 実は過去には9作品が、韓国や台湾で翻訳出版されています。
日本版と比べると、装丁や製本、縦書きと横書きの差など、微妙に違うことが分かります。 自分の書いた作品が、いつか海を渡ってどこかの国で読まれる――そんな可能性を秘めた小川未明文学賞へのご応募を、お待ちしております。
▲読書を通して得られる感動は世界共通ですね。
上越市の未明の出身校で、『湊町の寅吉』の贈呈式&講演会が開かれました!2020年2月17日更新
2月4日、新潟県の上越市立大手町小学校にて、第27回大賞受賞作『湊町の寅吉』の上越市教育委員会への贈呈式が行われました。
大手町小学校は、小川未明の母校で、校庭には未明作品の碑も立てられています。
同時に受賞作を書かれた著者の藤村沙希さんの講演会も行われ、5年生の児童55名を前に、 読書が好きで作家にあこがれていた子ども時代の話や、25歳の時に船で世界を旅した経験が、今の自分や作品に繋がっているという話をされました。(そして、藤村さん手作りの絵本の読み聞かせも!)
参加したみなさんはふだんきけない作家の話に興味津々。以下、お子さんたちから出た質問と藤村さんの回答の一部をご紹介します。
Q.なんで作家になったんですか?
藤村さん:私にとってお話を書く作家は、魔法使いのような不思議な存在でした。
そんな不思議なものになりたいなあ、と思っていたのです。
Q.作家になって大変なことはなんですか?
受賞してから本になるまで、たくさん書き直した。
今となっては楽しかったと思うのですが、メールのやり取りもすごい量で、本当に大変だったです。
Q.これからどんなお話を書きたいですか?
今、佐渡を舞台にしたたぬきの話が書きたいです。
▲読書が好きで、小さい頃は毎日学校の図書室に通ったという藤村さん。本だけでなく、スヌーピーなどの漫画も好きだったそうです。
▲当日は、大手町小学校の5年生55名が集会室に集まり、藤村さんの話にききいりました。
第27回大賞受賞作、
書籍化進行中です!2019年10月11日更新
今年の3月に大賞を受賞した「湊町の寅吉」(受賞時タイトル「湊まちの寅吉」)の書籍化が、11月末の発刊を目指して鋭意進行中。
イラストレーターのMinoruさん(Twitter @minoru200)による、はなやかなカバーイラストも到着しました!!
発刊まで、楽しみにお待ちください!
▲仮でタイトルを入れたラフ画を巻いてみました。後ろは本番用のイラスト。
森島いずみさんインタビュー
2019年8月15日更新森島いずみさんプロフィール
児童文学作家。2012年『パンプキン・ロード』で第20回小川未明文学賞大賞受賞。2015年『あの花火は消えない』(偕成社)で第63回産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞、2018年『まっすぐな地平線』は第22回さぴあ作文コンクール課題図書に選ばれた。日本児童文学者協会会員。写真はさぴあ作文コンクール表彰式での講演の様子。
小川未明文学賞の思い出、児童文学への思い
受賞作『パンプキン・ロード』は、東日本大震災の被災経験を踏まえ、避難生活の中で無我夢中で書いた作品でしたので、書き上げた後に、燃え尽き症候群のようになってしばらくぐったりしてしまい休養が必要でした。受賞の知らせを受けて、徐々に気力を回復することができました。現代の子供たちに本当に必要な心の支えは何かを日ごろから考えながら、そして社会の変化をよく見据えていくことが大事だと思っています。
応募者へのメッセージ
自分の子ども時代を思い出し、周りの様々な物事をどんなふうに感じたか、どうであることを願ったかを考えながら書くと、子どもの心が共鳴してくれるのではないかと思います。
宮下恵茉さんインタビュー
2019年6月1日更新宮下恵茉さんプロフィール
児童文学作家。梅花女子大学准教授。2006年に第15回小川未明文学賞大賞を受賞、作品は『ジジ きみと歩いた』として学研より刊行。同作品で第37回児童文芸新人賞を受賞。その他作品に、『真夜中のカカシデイズ』(学研)、「龍神王子(ドラゴン・プリンス)!」シリーズ(講談社)、「キミと、いつか。」シリーズ(集英社)、『スマイル・ムーンの夜に』(ポプラ社)など。左の写真はサイン会での一枚。
小川未明文学賞の思い出、児童文学への思い
高校生の頃から児童文学の道を志すようになり、なにがなんでもプロの作家になりたかったわたし。小川未明文学賞のおかげでその夢が叶い、わたしの人生は大きく変わりました。初めて自分が書いた作品が本になった時の感激は今も忘れておりません。大賞をいただけてから10数年経ち、今も作家として活動できていることを幸せに思っています。これからもこどもたちに光を与えられる作品を書いていきたいです。
応募者へのメッセージ
なぜ書くのか。誰に伝えたいのか。あなたの中に明確な答えはありますか?あなたの熱い思いが読者にきちんと届くよう、冷静な気持ちで推敲に時間をかけてみてください。応援しています!
中山聖子さんインタビュー
2019年3月1日更新中山聖子さんプロフィール
児童文学作家。2004年に第13回小川未明文学賞大賞を受賞、作品は『三人だけの山村留学』として学研より刊行。その他作品に、「べんり屋、寺岡」シリーズ(文研出版)、『さよなら、ぼくらの千代商店』(岩崎書店)、『その景色をさがして』(PHP研究所)など。現在は山口県宇部市に暮らしながら、執筆活動を行っている。日本児童文芸家協会・日本児童文学者協会会員。
小川未明文学賞の思い出、児童文学への思い
私が応募した作品は、当時小学生だったわが子やその友達の言動からたくさんのヒントを得て書いた物語でした。まさか受賞するなんて思わなかったので、「大賞です」とお電話をいただいた時には、何のことか分からず戸惑ったのを覚えています。閉じこもって書いていた部屋の扉が、突然大きく開かれたような感じでした。今、身近に小さな子はいませんが、物語を書くことで子どもの世界と繋がっていられることを、とても幸せに思っています。
応募者へのメッセージ
大切なのは、その作品を読むかもしれない子どもたちの顔を思い浮かべながら書くことだと思います。「伝えたい」「届けたい」という気持ちが、きっと物語の力になるはずです。
第26回受賞者ちばるりこさんが
角野栄子先生との対談を行いました! 2019年2月1日更新
昨年、国際アンデルセン賞作家賞を受賞された角野栄子先生と、「日本のアンデルセン」とも呼ばれる小川未明の名を冠した第26回小川未明文学賞を受賞したちばるりこさん。
実は角野先生が客員教授を務める日本福祉大学は、ちばるりこさんの出身校でもあります。そんなつながりもあって今回、お二人の夢のような対談が、日本福祉大学同窓会さんの橋渡しにより実現いたしました!
某日鎌倉で開かれた対談に、恐縮ながら学研編集者も、ご好意により同席させていただきました。(なお、対談の内容は日本福祉大学同窓会会報誌122号にて、掲載される予定です。)
▲楽しそうに対談される角野先生とちばさん。
角野先生の国際アンデルセン賞受賞の話から、児童文学について思うこと、お二方の作品についてなど、
話題は尽きませんでした。
そしてなんと、角野先生から小川未明文学賞応募者へのメッセージもいただきましたので、以下掲載したいと思います。
角野栄子先生から小川未明文学賞応募者へのメッセージ
児童文学作家になるには、書くのが好きじゃないと無理。毎日書くこと。ひらめいた時だけ、ではなくトレーニングするように、日常化しないとだめ。結局は、コツコツやるひとが勝ちです。
角野栄子先生、ちばるりこさん、日本福祉大学同窓会のみなさん、どうもありがとうございました!
角野栄子先生プロフィール
童話作家、絵本作家、ノンフィクション作家、エッセイスト。2018年、国際アンデルセン賞作家賞を受賞。作品に「魔女の宅急便」など多数。日本福祉大学客員教授。
ちばるりこさんプロフィール
岩手県盛岡市在住。日本福祉大学卒。岩手児童文学の会会員。「ふろむ」同人。「スケッチブック 供養絵をめぐる物語」で第26回小川未明文学賞大賞を受賞。
今井恭子さんインタビュー
2018年12月7日更新今井恭子さんプロフィール
児童文学作家。2003年に第12回小川未明文学賞大賞を受賞、作品は『歩き出す夏』として学研より刊行。その他作品に、「キダマッチ先生!」絵本シリーズ(BL出版)、『丸天井の下の「ワーオ!」』(くもん出版)、『ぼくのプールサイド』(学研)など。2018年、『こんぴら狗』(くもん出版)で 第58回日本児童文学者協会賞、第65回産経児童出版文化賞産経新聞社賞、第67回小学館児童出版文化賞を受賞。左の写真は小学館児童出版文化賞の授賞式で撮影したもの。
小川未明文学賞の思い出、児童文学への思い
私は小川未明文学賞の受賞以前にいくつも公募の賞を受賞していましたが、やはり未明賞で大賞をいただいたことが作家としての実質的なスタートになったと思います。
児童文学の世界に入る前は、随筆や小説を書いていたせいか、特に子どものために……と、意識して書いているつもりはありません。子どもも読める、けれど、大人が読んでも決して見劣りせず面白い。そういう作品を書きたい、といつも思っています。
応募者へのメッセージ
選考にかかわる者として、良い作品に、優れた作家となる書き手に出会いたいと願っています。自己満足に陥らないよう読者の視線を意識して、でも気負わず丁寧に書いて下さい。あなた独自のユニークな作品を待っています。